高齢者の事例検討(9)
東海社会福祉科学研究所
大 北 秀 雄
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生活保護制度について、前回に続いて内容を紹介します。
【生活保護のあゆみ】
「1874 年 恤救規則」
身寄りがなく、高齢、幼少、疾病、障害により生産活動に従事できない極貧の者に米を給与するものでありましたが、血縁的、地縁的な助け合いの精神を基本とし、それに頼ることができない者を限定的に救済する制度でした。
「1929年 救護法」
第一次世界大戦後の長びく不況のために、生活困窮者が大量に発生すると、1929(昭和4)年には救護法が制定され、公的な救護義務が明確化されるとともに、対象者が拡大されました。
「1946 年(旧)生活保護法」
終戦直後、戦災者や引揚者を始め国民の大多数がその日の食糧すら手に入らないという絶望的な窮状に追い込まれました。こうした中で、生活困窮者を救済するために、全国民に対し、現に困窮していれば理由の如何を問わず最低生活を保障する臨時・応急的な生活援護が実施されました。これは、生活困窮者や戦災者、在外留守家族などを対象に、宿泊・給食・寝具その他生活必需品の給与、食料品の補給などを行うものでした。
(「生活困窮者緊急生活援護要綱」が1945(昭和20)年12月に決定され、翌年4月から実施されました。)
1946(昭和21)年の援護対象者は約270万人で、総人口の3.5%にも及んでいます。
これに引き続き、同年9月には、旧生活保護法が制定・10月から施行されて、不完全ながらも無差別平等の原則、国家責任の原則、最低生活保障の原則という三原則に基づく公的扶助制度が確立されました。
「1950 年(新)生活保護法」
1950(昭和25)年には、新憲法の下で、新たに生活保護法が制定され、憲法の理念に基づいた生活保護が行われることになりました。
1951(昭和26)年度の生活保護予算は、一般会計予算の約2.7%を占める約200億円の規模であり、被保護人員は約205万人にのぼりました。国民生活が貧困を極める中で、国民の最低生活を保障するものとして重要な役割を果たしました。
国民の生活水準が向上するのに伴い、生活困窮者の救済対策に加え、全国民をカバーする医療保険制度及び年金制度が導入され、それまでの公費による生活保護中心の時代から、加入者自らが保険料を支払い、それによって疾病や老齢等のリスクに備える社会保険中心の時代へと移行することとなっていきました。
【生活保護制度の理念】
日本国憲法は、「国民は、健康で文化的な最低限の生活を営む権利を有する」と規定しています。
憲法が保障するいわゆる生存権保障を実現するための制度の一つとして制定されたのが生活保護法です。その第1条には「この法律は日本国憲法25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その程度に応じ最低限の生活を保障するとともに、その自立助長を目的とする」とうたわれています。
このような生活保護制度は、保護を国民の権利として認め、健康で文化的な最低限の生活を保障し、さらに積極的にそれらの人々の自立の助長を図ることを目的としています。この自立の助長は、最低限の生活の保障とともに、この制度を貫く大原則となっています。
【生活保護制度の基本原理】
「国家責任による最低生活保障の原理(法第1条)」
国が生活に困窮するすべての国民に対し、その程度に応じ最低限の生活を保障するとともに、その自立助長を目的とするもので、この制度の実施に対する究極責任は国が持つものです。
「無差別平等の原理(法第2条)」
国民はすべてこの法律の定める要件を満たす限り、保護請求権を無差別に与えられるものです。
「最低生活保障の原理(法第3条)」
この法律により保障される最低限の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することのできるものでなければならないものです。
「補足性の原理(法第4条)」
保護は、生活に困窮する者がその利用し得る資産、能力、その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われ、民法上の扶養や他の法律による扶助は保護に優先して行われなければならないものです。
ア 資産の活用
イ 能力の活用
最低生活の維持のため、その能力を活用することは必要不可欠です。したがって、現実に労働能力があり、適当な職場があるのに全く働こうとしない者などは、補足性の用件を欠くことになり、保護を受けられない場合があります。
ウ 扶養義務者の扶養
制度では、民法に定められた扶養義務者の扶養履行を保護に優先させる ことになっています。特に、夫婦相互間、未成熟の子(義務教育終了前の児童)に対する親には、極めて強い扶養義務が課せられています。
エ 他の法律による給付の優先
この制度は、我が国の公的救済制度のなかで最終の救済制度です。従って、他の法律による給付が受けられるときは、その給付が優先します。具体的には、社会保険制度、高額療養制度、児童扶養手当等の各種手当制度があります。
【生活保護制度の基本原則】
「申請保護の原則(法第7条)」
保護は、要保護者等の申請に基づいて開始します。なお、急迫の場合には、職権による必要な保護を行うものです。
「基準及び程度の原則(法第8条)」
保護の程度は、厚生労働大臣の定める基準により測定した需要を基とし、要保護者の金銭等で満たし得ない不足分を補う程度とします。この基準は、要保護者の年齢、性別、世帯構成その他必要な事項を考慮した最低限の需要を十分満たすとともに、これをこえないものでなければならないものです。
「必要即応の原則(法第9条)」
保護は、要保護者の年齢、健康状態その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して適正に行うものとするものです。
「世帯保護の原則(法第10条)」
保護の要否及び程度は、世帯単位によって定められています。ただし、これによりがたいときは、個人を単位とすることができます。
【保護の実施機関等】
「実施機関」
要保護者の居住地(又は現在地)を管轄する福祉事務所
「補助機関等」
(1)福祉事務所を設置しない町村の長
申請書の受理、保護金品の交付等福祉事務所長の業務の補助
(2)民生委員
市町村長、福祉事務所長等の事務への協力
「保護施設」
(1)救護施設
(2)更生施設
(3)医療保護施設
(4)授産施設
(5)宿泊提供施設
【保護の対象】
生活に困窮する日本国民で、その者が利用し得る現金を含む資産、稼働能力その他あらゆるものを生活費に充当しても、なお、厚生労働大臣の定める保護の基準で測定される最低限度の生活ができない者です。
なお、生活に困窮する在日外国人に対しても人道上、国際道義上の観点から、戦前から日本に定着して生活習慣も日本人と全く同様の状況にある外国人等には、日本国民に準じた保護を行っています。
【保護の種類及び範囲】
「生活扶助」
(1) 衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの
(2) 移送
「教育扶助」
(1)義務教育に伴って必要な教科書その他の学用品
(2)義務教育に伴って必要な通学用品
(3)学校給食その他義務教育に伴って必要なもの
「住宅扶助」
(1)住居
(2)補修その他住宅の維持に必要なもの
「医療扶助」
(1)診察
(2)薬剤又は治療材料
(3)医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術
(4)居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
(5)病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
(6)移送
「介護扶助」
(1)居宅介護(居宅介護計画に基づき行うものに限る)
(2)福祉用具
(3)住宅改修
(4)施設介護
(5)移送
「出産扶助」
(1)分娩の介助
(2)分娩前及び分娩後の処置
(3)脱脂綿、ガーゼその他の衛生材料
「生業扶助」
(1)生業に必要な資金、器具又は資料
(2)生業に必要な技能の取得
(3)就労のために必要なもの
「葬祭扶助」
(1)検案
(2)死体の運搬
(3)火葬又は埋葬
(4)納骨その他葬祭のために必要なもの
【介護扶助の給付の流れ】
(1)保護申請
要保護者から福祉事務所等へ(居宅サービス計画添付)
(2)介護扶助の決定
福祉事務所等
(3)介護券送付
福祉事務所から指定介護機関へ
(4)サービス提供
指定介護機関から被保護者へ
(5)介護報酬の請求
指定介護機関から国保連へ((4)の月の翌月10日まで)
(6)審査
国保連
(7)介護報酬請求
国保連から介護保険者・公費負担者へ((4)の月の翌々月10日まで)
(8)介護報酬支払
介護保険者・公費負担者から国保連へ((4)の月の翌々月20日まで)
(9)介護報酬支払
国保連から指定介護機関へ((4)の月の翌々月の月末)
【介護扶助の範囲】
介護保険で給付される対象となる介護サービスと同じサービスが対象になります。
在宅サービスとしては、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション、福祉用具貸与(車イス、介護用ベッド等)、居宅療養管理指導、短期入所生活介護(ショートステイ)、短期入所療養介護、認知症対応型共同生活介護(認知症老人グループホーム),特定施設入所者生活介護(ケアハウス、有料老人ホーム入所者への介護)の12種類があります。
また、居宅介護福祉用具購入費、居宅介護住宅改修費、特例居宅介護サービス費、特例居宅介護サービス計画費、高額サービス費の支給があります。
施設サービスとしては、指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設、指定介護療養型医療施設です。なお、介護保険で給付対象となるものが対象ですから、生活保護を受給している人には、介護保険では認められている介護費用の全額を自費で支払う部分のあるプランは認められていません。





















